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トップの提言〜ものの考え方〜

「 イオンを創った女 」を読んで

 感想文:大阪営業所 新潟隼久

日本最大の小売りグループ、イオンの創業家、小島千鶴子氏の評伝だ。同氏はイオンの実質的な創業者、岡田卓也名誉会長の姉で、イオンの源流の一つ、岡田屋呉服店の社長も務めた。戦後の混乱期から実業を再興させ、高度成長期には人事部門の責任者として近代経営の基礎作りに尽力した。現在、102歳である。

評伝ではあるが、経営書といったほうがふさわしい。成功の姿を明確に描き、自分のもつ潜在能力を100%活用することの大切さを説く。人材の育成には時間も費用も惜しまない。教育を成長投資と位置づけた。長く小島氏に仕えた著者だからこそ、細かなエピソードを織り交ぜながら組織のあり方を論じている。

現役時代の口癖は「問題あらへんか?」だった。これは現場への関心を探ることであり、従業員の状況を把握することでもあり、ひいては従業員に当事者意識をもたせるためでもあった。部下は上司が「見てくれている」という安心感を得る。厳母と慈母の両面であろう。

労働集約的な産業の小売業はイノベーションを起こしづらいといわれるが、「人の心の革新」によって顧客の立場に立って意識的観察を行うことで新しい商品やサービスの提案が可能になる。組織作りに悩む中間管理職や若い経営者、そして女性へのエールにも読めた。

2021.3.31.


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